ロジシンコラム

主体性を育てるために、組織ができる3つのこと

個人の動機が、組織の中で立ち上がる条件とは

渡辺まどか
渡辺まどか
こんにちは。
渡辺まどかです。

前回の記事では、部下の主体性は、正しさや管理によって外側から押し込めるものではなく、その人の内側にある動機から生まれる、という話を書きました。

そして、その動機は、必ずしも
・やりたいです
・頑張ります
といった前向きな言葉の形で現れるとは限りません。

むしろ、
・面倒だ
・気が進まない
・なんとなく引っかかる
といったネガティブな反応の中に、その人なりの問題意識や本音が隠れていることもある。

そうした、その人なりの感情や願いを、私は「わがまま」と呼んでいます。
「わがまま」こそが、動機であり、主体性の根源なのです

ただし、本人の中に動機があれば、それだけで自然に主体的に動けるわけではありません。
なぜなら、職場では、個人の感情や願いよりも、役割や責任、組織の方針、上司の期待の方が強く前面に出やすいからです。

個人の内側にある「こうしたい」「これは嫌だ」「こうありたい」という感覚があっても、それを出してよい空気がなければ、動機は表に出てきません


出てきたとしても、未熟さや反抗として処理されてしまうと、行動につながる前に押しつぶされてしまいます。 これが、言われた仕事はこなしても、受け身で、指示待ちになってしまう原因なのです。

だからこそ、主体性を育てるためには、個人の努力だけでなく、主体性が立ち上がる環境を組織側が整える必要があります。

主体性を育てるために、組織ができること

では、主体的な行動を促すために、組織として何をすればよいのでしょうか。

一つ目は、本人の感じ方や考え方を言葉にできる場をつくることです。

人は、
・自分が何にワクワクしやすいのか
・何を嫌だと感じやすいのか
・どんな価値観を大事にしているのか
が見えていないと、自分の動機を行動につなげることができません。

しかし、そういった「自分の感覚」を言葉にする機会は、ほとんどないというのが現状ではないでしょうか。

仕事における主体性は、スキルや知識、モチベーションの問題だけでなく、「自分は何を大切にしたい人なのか」を、本人が自覚できているかどうかに大きく左右されます。

二つ目は、個人の動機と組織のミッションの重なりを見つけることです。

主体性は、個人の自由放任の中にあるのではありません。
個人の「こうしたい」「こうありたい」と、組織から求められる役割や期待が重なるところに立ち上がります。

通常、組織から求められる役割や期待は、言語化されていることが多い。
例えば組織の方針として、職務定義書や評価指標として、あるいは、個人の目標設定で上司から伝えられることも多いでしょう。

一方、個人の「こうしたい」「こうありたい」は、言語化されていなかったり、組織の方針や目標の延長として語られる(語らせられる)ことが多かったりします。
これでは、組織のミッションに、個人の動機が従属させられた状態になってしまいます。

個人の動機は、個人の動機として、独立して言語化する。
そのうえで、組織のミッションとどう重なるのか、重ならないのか。
手順を間違えてはいけないのです。

個人の動機と組織のミッションの重なりに、本人が腹落ちしたときに、人は「自分ごと」として動きやすくなります。

三つ目は、心理的安全性を「一人ひとり違うことが、脅威ではなく、貢献になるものだ」という意味で捉え、それを実践していくことです。

心理的安全性というと、単に居心地のよい職場や、やさしい雰囲気のことだと誤解されることがあります。
しかし本質はそこではありません。

大事なのは、

自分の感じ方や違和感、他の人と違う意見を出しても大丈夫だと思える状態があることです。

知識、経験、価値観が違えば、同じゴールを見ていても意見が違うのは自然なことです。
その違いを出せない職場では、個人の動機は表に出てきませんし、主体性も育ちにくくなります。

人は、自分にとって当たり前の価値観は、他人も持っているのが当然だという、暗黙の前提を持っています。
そのため、相手のふるまいが、自分が大切にしている価値観と合わないと感じる時、怒りや蔑みの感情が現れやすくなります。

つまり、相手を無意識のうちに否定したくなってしまうものなのです。
心理的安全性は、そういう雰囲気を作るものではありません。

組織の属するすべての人が、
自分の中に無意識のうちに相手を否定したくなる気持ちがあるのかもしれない、と、自分の感情と向き合うこと。
そして、相手は自分とは違うように感じ、考えているのかもしれないという前提のもとに、コミュニケーションをすることによって形成されていくものなのです。

主体性は、「求めるもの」ではなく「立ち上がるもの」

ここまで整理すると、上司や研修担当者が現場で見るべきものも変わってきます。

たとえば、「部下が受け身だ」という現象を見たとき、単に意欲不足と捉えるのではなく、

●本人の動機が見えていないのではないか
●組織からの期待と、自分の中の願望や違和感がつながっていないのではないか
●違いを出しにくい空気があるのではないか

と見立てることができるようになります。

すると、打つべき手も変わってきます。
もっと危機感を持たせる。
もっと責任感を持たせる。
もっと考えさせる。
そうした方向だけではなく、

まずは本人が何を感じているのかを言葉にできるようにする

そのうえで、組織の期待との重なりを探る。
さらに、違う意見や違和感を出せる関係性をつくる。
そうした関わりの方が、主体性を育てるうえでは本質的です。

主体性を育てたいとき、私たちはつい、相手を変えようとしてしまいます。
しかし本当に必要なのは、「もっと動け」と圧をかけることではなく、その人の中にある本音、違和感や期待、願望が、組織の中で潰されずに、一つの大切な意見として一考される余地を持てるようにすることです。

個人の動機と、組織のミッションが重なる場所を見つけること。
違いを出しても大丈夫だと思える関係性をつくること。
ネガティブな感情も含めて、問題発見と行動の動機として扱うこと。

そうした環境設計があって初めて、主体性は「求めるもの」ではなく、「立ち上がるもの」になっていくのではないかと思います。

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