渡辺まどかです。
プレイヤーとしては成果を出してきたのに、
管理職になった途端に、なんとなくうまくいかなくなる。そんなことはないでしょうか。
自分が動けば、成果につながる。
目の前の課題を見つけて、自分なりに工夫し、
手を動かして前に進める。
そうやって評価されてきた人ほど、
管理職になってから別の難しさに直面することがあります。
たとえば、
・部下に方針を伝えようとしても、自分の考えをうまく言葉にできない。
・上司や経営層に報告しようとしても、事実や状況の説明はできるのに、突っ込まれると、自分の見立てや提案をうまく返せない。
自分の中には経験もあるし、現場で見てきたこともある。
なんとなく「このままではよくない」という問題意識もある。
それなのに、いざ管理職として話そうとすると、急に自信がなくなる。
こうしたつまずきは、性格の問題でも、話し方が下手だからでも、リーダーシップが足りないからでもないのかもしれません。
プレイヤー時代と管理職では、求められる価値の出し方が変わるからです。
管理職になると、自分が理解し、自分が動き、自分が成果を出すだけではなく、自分の考えを言葉にし、人を通じて成果を出すことが求められます。
そこで、多くの人がつまずきやすいポイントが見えてきます。
目次
つまずきやすいポイント①「自分がやった方が早い」から抜け出せない
プレイヤーとして成果を出してきた人には、大きな強みがあります。
・目の前の仕事をよく見ている
・何が問題なのかを考えている
・自分なりに工夫して、手を動かしている
・必要があれば周囲と調整しながら前に進めている
つまり、自分が動くことで価値を出してきた人なのだと思います。
これはとても大きな強みです。
だからこそ周囲から評価され、管理職を任されることになる。
ところが、管理職になると、この「自分が動いて成果を出す」という強みが、そのままでは使いにくくなることがあります。
なぜなら、管理職に求められるのは、自分がすべてを動かすことではないからです。
自分がやった方が早い。
自分が説明した方が正確。
自分が判断した方が安心。
そう思う場面は、たくさんあります。
しかし、管理職として求められるのは、自分が直接手を動かして成果を出すことだけではありません。
・チームとしてどこに向かうのかを示す。
・部下が動きやすいように背景や意図を伝える。
・上司に自分の見立てや提案を示す。
つまり、自分が動いて成果を出す働き方から、人を通じて成果を出す働き方へ切り替える必要があるのです。
ここで難しいのは、単に「人に任せればいい」という話ではないことです。
人に任せるためには、自分が何を見ているのかを言葉にする必要があります。
☑なぜ、それを大事だと思っているのか
☑何を優先したいのか
☑どこまで任せたいのか
☑どんな状態になればよいと思っているのか
こうしたことを言葉にしないまま、ただ「やっておいて」と伝えても、部下は動きにくいのです。
つまずきやすいポイント②「正しい答えを持たなければ」と思いすぎる
管理職になると、急に「答える側」に立たされる感覚が増えるかもしれません。
・部下から相談される
・上司から意見を求められる
・会議で方針を聞かれる
・他部署から判断を迫られる
そういう場面が増えると、無意識のうちに、
ちゃんと答えなければ
正しい方針を示さなければ
迷っている姿を見せてはいけない
根拠が不確かなことを言ってはいけない
そんなふうに感じる人もいると思います。
もちろん、管理職として責任を持って判断することは大切です。
曖昧なまま放置するわけにはいかない場面もありますし、最終的に方針や優先順位を決める必要もあります。
けれど、いつも最初から完成された正しい答えを持っていなければならないわけではありません。
むしろ、そう思いすぎるほど、言葉が出なくなります。
「まだ整理できていないから言えない」
「完璧に説明できないから黙っておこう」
「突っ込まれたら困るから、もう少し考えてから話そう」
そうしているうちに、部下には背景や意図が伝わらないまま、ただ指示だけが降りてくる。
上司には、こちらの問題意識や見立てが伝わらないまま、状況説明だけで終わってしまう。
結果として、「何を考えているのかわからない」「結局どうしたいのかわからない」と言われてしまうこともあるのです。
つまずきやすいポイント③上司や経営層への報告が「事実の説明」で止まる
プレイヤー時代は、「何をやったか」「どこまで進んだか」「何が起きているか」を説明できれば十分だったかもしれません。
けれど、管理職になると、上司や経営層が聞きたいのはそれだけではありません。
この状況を、あなたはどう見ているのか。
何が本質的な問題だと思うのか。
どの選択肢がよいと考えるのか。
上司や経営層に、何を判断してほしいのか。
つまり、事実を正確に伝えるだけではなく、自分はどう考えているのかを言葉にする必要が出てくるのです。
さらに、ここで難しいのは、その見立てや提案には、自分の意思が含まれるということです。
「私は、こちらを優先したい」
「この課題を放置したくない」
「この方向に進めた方がよいと思う」
こうした言葉には、その人なりの思い入れや願いが入っています。
少し強い言い方をすると、それは仕事における自分なりの“わがまま”なのだと思います。
もちろん、ここでいうわがままは、好き勝手に振る舞うという意味ではありません。
自分は何を大事にしたいのか。
どんな状態を目指したいのか。
何を変えたいと思っているのか。
そういう、自分の中にある素朴な期待や希望、願望、問題意識のことです。
報告や提案では、客観的な事実やロジックが大切です。
しかし、それだけで組み立てた提案は、なんとなく「借りてきた言葉」のように聞こえてしまいます。
組織の方針や期待を踏まえるとこうしたほうがいい。環境から判断するとこれが有利だ。
もちろん、それらは必要な視点です。
でも、そこに自分は本当に何を変えたいのか、なぜ、それを必要だと思っているのかが乗っていないと、相手には熱量や主体性が伝わりにくいのです。
つまずきやすいポイント④自信を「できる自分」に求めてしまう
『管理職として自信を持ちたい。』
これは自然な願いだと思います。
しかし、自信を
・いつも正しい答えを持っていること
・堂々と話せること
・できる自分を見せられること
に置いてしまうと、かえって苦しくなります。
自信がないから話せない、のではなく、まだ言葉になっていない途中の考えや問題意識を、「こんな状態では出せない」と自分で止めてしまう。
その結果、ますます言葉が出なくなり、さらに自信をなくしていく。
そういう循環が起こりやすいのです。
管理職になってから自信をなくしやすいのは、能力が足りないからとは限りません。
プレイヤーとして培ってきた経験や強みが、まだ管理職として使える言葉になっていないだけかもしれない。
そう考えると、つまずきの見え方も少し変わってきます。
おわりに
管理職になった人がつまずきやすいポイントは、単なる能力不足や経験不足ではありません。
多くの場合、それは役割の変化に対して、言葉と視点の切り替えがまだ追いついていない状態なのだと思います。
・ 自分がやった方が早いと思ってしまう
・ 正しい答えを持たなければと構えてしまう
・ 上司への報告が事実の説明で止まる
・ 自信を「できる自分」に求めてしまう
こうしたつまずきの背景には、プレイヤー時代に培ってきた経験や強みが、まだ管理職として使える言葉になっていない、ということがあります。
では、こうしたつまずきは、どうすれば越えられるのでしょうか。
次の記事では、管理職のつまずきから抜け出すために、何をすればよいのかを整理してみます。



