渡辺まどかです。
前回の記事では、管理職になった人がつまずきやすいポイントについて整理しました。
・自分がやった方が早い、という感覚から抜け出せないこと。
・正しい答えを持たなければと思いすぎること。
・上司や経営層への報告が、事実の説明で止まってしまうこと。
こうしたつまずきの背景には、プレイヤー時代に培ってきた経験や強みが、まだ管理職として使える言葉になっていない、という構造があるのではないか、という話でした。
では、そうしたつまずきは、どうすれば越えられるのでしょうか。
私は、そのために必要なのは、いきなり堂々と話せるようになることでも、最初から正しい答えを持つことでもないと思っています。
必要なのは、自分の中にある思いを掘り起こし、自分の言葉で伝え、相手と協働できる状態になることです。
そこから、管理職としての自信ややりがいも少しずつ育っていくのではないでしょうか。
目次
1. 自分の中にある違和感や問題意識を見つけること
管理職のつまずきを越えるために、最初に必要なのは、自分の中にある違和感や問題意識を自分で見つけることです。
・自分は何を見ているのか。
・何に引っかかっているのか。
・何を大事にしたいのか。
・なぜ、その方向がよいと思っているのか。
・どこまで見えていて、どこから先を一緒に考えたいのか。
こうしたことが少しずつ言葉になると、未完成な考えも、ただの迷いや弱さではなくなります。
それは、誠実に考えていることを示す言葉になり、相手と協働するための入口になるのです。
管理職になると、どうしても「答えを出さなければ」という意識が強くなります。
けれど、いきなり完成された答えをつくろうとするほど、言葉は止まりやすい。
むしろ必要なのは、途中の考えでもいいから、自分が何を見ているのかを言葉にしてみることです。
たとえば、
「まだ整理中ですが、私はこの点に引っかかっています」
「今見えている範囲では、この方向がよいと考えています」
「ここまでは見えていますが、この先は一緒に考えたいです」
こうした言葉は、完成された正解ではありません。
でも、何も考えていない言葉でもありません。
自分の中にある途中の思考を、相手と共有できる形にする言葉です。
2. 「正しい答え」ではなく「自分なりの仮説」を持つこと
管理職に必要なのは、いつも最初から正しい答えを持っていることではありません。
必要なのは、自分なりの仮説を持って伝え、相手と一緒に答えをつくっていくことです。
これは、責任を放棄することではありません。
むしろ逆で、わからないことを曖昧なままにせず、今見えていることを自分の言葉で差し出し、そこから一緒に考える余地をつくることです。
管理職が「正解を与える人」、部下が「それに従う人」という関係だけでいると、チームは受け身になりやすい。
けれど、途中の仮説や問題意識を共有できると、今、何が起きているのか、どこに問題がありそうなのか、どうすればお互いの知識・経験や強みを生かしながら前に進めるのかを、一緒に考える余地が生まれます。
つまり、管理職に必要なのは、「何も迷っていないふり」をすることではなく、迷いをそのままぶつけることでもなく、途中の考えを、相手と共有できる言葉にしていくことなのです。
3. 上司の方針と部下の“やってみたい”が重なる場所をつくること
管理職のつまずきを越えることは、自分が少し楽になるだけでは終わりません。
そこから先には、チームの変化があります。
管理職になると、「部下にもっと主体的に動いてほしい」と思う場面が増えるかもしれません。
・言われたことだけではなく、自分で考えて動いてほしい。
・こちらが細かく指示しなくても、状況を見て判断してほしい。
・チームのことを自分ごととして捉え、自分なりに提案してほしい。
そう思うのは自然なことです。
ただ、「主体的に動いてほしい」と言うだけで、部下が主体的に動けるようになるわけではありません。
主体性は、本人のやる気だけで生まれるものではないからです。
では、部下が自分で考えて動き出すチームには、何があるのでしょうか。
私はそこに、上司の方針と、部下自身の“やってみたい”が重なる場所があるのだと思います。
たとえば、上司である自分が、
「このチームでは、もっとお客様の声を起点にした営業戦略をつくりたい」
「今の業務プロセスを見直して、もっと少ない負荷で成果が出る流れをつくりたい」
「若手が安心して挑戦できるチームにしたい」
と思っている。
そういう、会社や組織の期待ともつながる方針がある。
そのうえで、部下の中にも、
「それならやってみたい」
「そこなら自分の強みが活かせそうだ」
と思える接点があるとき、人は動きやすくなります。
管理職に必要なのは、正解を与えることだけではありません。
自分の考えを言葉にし、人が動ける余白をつくることでもあるのです。
4. 「自信」をできる自分ではなく、自分の内側に置き直すこと
管理職として前に進むために、もう一つ大切なのが、「自信」の置き場所を変えることです。
自信とは、字の通り「自分を信じる」と書きます。
では、信じるべき自分とは何なのか。
私は、それは、自分の中にある気持ちや違和感、「こうしたい」「これは放置したくない」という小さな意思なのだと思います。
管理職として自信を持つ、というのは、いつも正しい答えを持っていることではありません。
・自分が何に違和感を持ち
・何を大事にしたいと思い
・どちらに進みたいと感じているのか
その内側の感覚を無視せず、仕事の文脈で相手に伝わる言葉にしていくこと。
そこから、自信を持って伝える力は育っていくのだと思います。
できる自分をアピールすることが自信なのではない。
むしろ、自分の中にある違和感や問題意識を、自分で受け取り、言葉にしていくこと。
その積み重ねが、管理職としての自信の土台になるのではないでしょうか。
管理職としてのやりがいは、あとから育っていく
管理職のつまずきから抜け出すとは、単に「うまく話せるようになる」ことではありません。
自分が何を見ているのか。
何を問題だと感じているのか。
何を大事にしたいのか。
チームをどこに向かわせたいのか。
そうしたことを、自分の言葉で少しずつ語れるようになる。
そのうえで、部下とも上司とも協働できるようになる。
すると、管理職という仕事の見え方も変わってきます。
プレイヤーのときのやりがいは、自分が直接動いて成果が出ることの中にあったかもしれません。
しかし、管理職のやりがいは少し違います。
自分で決めて、自分が関わって、誰かと一緒につくっていく。
そのプロセスの中で、「この仕事は、自分が引き受けている仕事なんだ」と感じられるようになること。
そこに、管理職としての面白さがあるのではないかと思います。
おわりに
管理職のつまずきは、気合いや努力だけで越えられるものではありません。
必要なのは、自分の中にある問題意識や違和感を見つけ、それを自分の言葉で伝えられるようになること。
そして、その言葉を起点に、人と協働できるようになることです。
● 自分の中にある思いを掘り起こし、自分の言葉で伝える
● 正しい答えではなく、自分なりの仮説を持って共有する
● 上司の方針と部下の“やってみたい”が重なる場所をつくる
● できる自分ではなく、自分の内側にある意思を信じる
そうしたことが少しずつできるようになったとき、管理職のつまずきは、単なる苦しさではなく、自分なりの管理職のあり方をつくっていく入口になるのだと思います。



