渡辺まどかです。
前回は、会議に参加する立場でのお困りごとについて見てきました。
今回は、会議の議事進行役、ファシリテーションの技術について見てみたいと思います。
会議で意見を求めても、誰も話さない。
しばらく沈黙が続き、進行役だけが困っている。
そんな場面があると、つい、
参加者に当事者意識がない。
自分で考えようとしていない。
もっと主体的に発言してほしい。
と思いたくなるかもしれません。
けれど、会議で発言が出ない原因は、参加者の意欲だけにあるとは限りません。
問いが大きすぎたり、意見を出す時間と判断する時間が混ざったりしているために、発言しにくくなっていることがあります。
目次
いきなり正解を求めると、会議は止まりやすい
たとえば、会議で、
「この問題について、どうすればいいと思いますか?」
と聞かれたとします。
一見、普通の問いです。
しかし、参加者にとっては、
問題の原因を考える。
解決策を作る。
実現できるか確認する。
周囲への影響も考える。
そのうえで、人前で説明できる形にする。
という複数の作業を、一度に求められる問いでもあります。
しかも、会議の場では、
変なことを言ったらどうしよう。
的外れだったら恥ずかしい。
すでに検討済みの案だったらどうしよう。
まとまっていないことを話して、場を混乱させたくない。
と考える人もいます。
その結果、頭の中では何かを考えていても、発言するところまでたどり着けません。
会議が止まるのは、参加者が何も考えていないからではなく、最初から正解を出そうとしているからかもしれないのです。
大きな問いを、小さな問いに分ける
会議が止まったとき、進行役ができることの一つは、問いを小さくすることです。
いきなり、
「どう解決すればよいですか?」
と聞くのではなく、
「まず、今困っていることを出してみましょう」
「この業務の中で、特に負担を感じるのはどこですか」
「まだ確実でなくてもよいので、原因として気になることはありますか」
「正解かどうかは気にせず、思いつくことを挙げてください」
と、答えやすい問いに変えます。
結論を求める前に、気になっていることを出す。
解決策を求める前に、困っていることを出す。
意見を求める前に、見えている事実や違和感を出す。
こうすると、参加者は完成した答えを用意しなくても発言できます。
最初の一言が出ると、ほかの人も話を重ねやすくなります。
発散と収束が混ざると、話しにくくなる
会議を話しにくくするもう一つの原因が、発散と収束が混ざっていることです。
発散とは、まず材料を広く出す時間です。
思いついたこと。
気になっていること。
困っていること。
まだまとまっていないアイデア。
正解かどうかわからないものも含めて、いったん場に出します。
一方、収束とは、出てきたものを整理し、絞っていく時間です。
どれが重要なのか。
何が原因に近いのか。
どこから手をつけるのか。
どの案を採用するのか。
こうした判断をする段階です。
この二つが混ざると、発言は急に難しくなります。
たとえば、誰かがアイデアを出した瞬間に、
「それは予算的に難しいですね」
「前にもやりましたが、うまくいきませんでした」
「その案より、こちらの方が現実的です」
「でも、別の部署が反対すると思います」
と評価や反論が返ってくる。
発言した人は、まだ可能性を出しただけなのに、すぐに完成度や実現可能性を問われることになります。
これが続けば、参加者は次第に口を閉じます。
心理的安全性が担保されていないので、「発言しやすい人だけが、正しそうなことを言うだけの場」になります。
多くの人にとっては「自分が発言するには荷が重い場」になってしまうのです。
まだ考えの途中なのに、結論を求められる。
まだ出す時間なのに、正しいかどうかを評価される。
これでは、安心して話すことができません。
今が何の時間かを、進行役が示す
発散と収束を分けるために、特別な技法が必要なわけではありません。
進行役が、今がどの時間なのかを明確に伝えるだけでも、場は変わります。
発散の時間には、
「まずは意見を出す時間にしましょう」
「この段階では、実現可能性は判断しません」
「まとまっていないものでも大丈夫です」
「一通り出てから、あとで整理します」
と伝えます。
十分に材料が出たら、
「ここからは、出てきた内容を整理します」
「似ている意見をまとめてみましょう」
「特に影響が大きい問題は、どれでしょうか」
「最初に手をつけるなら、どこがよさそうですか」
と収束に切り替えます。
さらに必要であれば、
「今日は方向性まで決めます」
「今回は課題を整理するところまでにします」
と、会議の到達点も示します。
ファシリテーターの役割は、すべての答えを持つことではありません。
今は材料を出す時間なのか。
整理する時間なのか。
判断する時間なのか。
場のギアを示し、切り替えることです。
意見が出ない会議を、参加者だけの問題にしない
会議で意見が出ないとき、参加者の主体性を疑う前に、会議の問い方や進め方を見直す余地があります。
・いきなり大きな問いを投げていなかったか
・最初から完成した解決策を求めていなかったか
・意見を出した瞬間に、評価や反論が始まっていなかったか
・発散と収束のどちらをしているのか、参加者に伝わっていたか
こうした会議の設計によって、同じ参加者でも発言のしやすさは変わります。
人は、何を話せばよいかわからない場では、話しにくいものです。
反対に、
今は困っていることを出せばいい。
まだ正解でなくていい。
あとで整理する時間がある。
そうわかっていれば、考えている途中のことも話しやすくなります。
会議を前に進めるために必要なのは、最初から正解を持った参加者を集めることではありません。
未完成な考えを出せる問いをつくり、出す時間と決める時間を分けること。
その順番があるだけで、会議はずいぶん話しやすくなるのです。



