前回のブログでは、
- 自分の意見(スタンス)を明らかにして、相手に依頼したいことを、はっきりと書くことが必要だ
- 自分の意見(スタンス)の背後には、文章にはならないけれども、自分で考え、決断するというプロセスがある
- 面倒でも、考えることを放棄しない。考えた・決断した経験は、自分を育てる
ということをお伝えしました。
実は、その記事を書きながら、自分自身がとても危険な「ある考え方」をしていることに気づいてしまったのです。
これは、ぜひみなさんにもお伝えしたれば、と思い続けて筆をとっています。

成長を阻害する“危険な考え方“
前回のメルマガを書きながら、こんな風に思った自分がいたのです。
私は研修を受注する、出入りの業者。
だったら、相手のメールについてあれこれ言うべきではないのでは?
いただいたメールが、
「伝わらない文章」の典型例
だったので、ブログで取り上げさせていただくことにしたのですが、
ブログを書きながら、
いや、現実的に考えたら、「低姿勢に、ハイハイって聞いておくべきだよね」
と思ってしまったのです。
(そして実際、丁寧にお返事しました、笑)
ただ、この考え方は、実は大変危険な考え方なのです。
何が危険か、みなさんはわかりますか?

パワーバランスとコミュニケーション
前述の考え方の根底には、
- パワーバランス(上下関係)の上位に立つ者は、下位の者に対して雑なコミュニケーションをして構わない
- パワーバランスの下位に立つ者は、常に上位の者の意図を汲み、忖度してコミュニケーションを行わなければならない
という前提があります。
パワーバランスがある関係は、社会のいたるところに存在しています。
- 発注業者と出入りの業者
- お店とお客様
- 年上と年下
- 上司と部下
- 先生と学生・生徒
- 親と子ども
共通しているのは、知識や経験、情報、金銭などが不均衡な状態であること。
「与える者」と「受け取る者」という役割が固定しがちな関係です。
もちろん、先に生まれた人はより多くの経験をしていることが多いですし、専門的な知識を持っている人は、それを知らない人に伝える役割を果たします。
経済活動である以上、お金を払う人と受け取る人がいるのは当たり前です。
しかし、そのことと、コミュニケーションの質や忖度の必要性は別問題なのです。
仮に、
「パワーバランスの上位の人は下位の人に対して
雑にコミュニケーションをするのが当たり前であり、
それを受け入れなければならない」
という考え方が正しいとしましょう。
それが当たり前の世界では、人は、若いときには、相手の意図を汲み、相手に気に入られるために丁寧なコミュニケーションを心がけます。
しかし、経験を重ね、ポジションが上がるにつれて、理由や背景、目的など、必要な情報を提供せずに、「いいからこれをやれ」と命令するようになります。
あるいは、命令をせずに、情報をちらつかせて「私の気に入るように行動せよ」と忖度させることすらあるかもしれません。
忖度は思考を停止させる
前回のブログでもお伝えした通り、
本来、自分の意見には、「決断」に加えて、膨大な「自分なりの考え」が必要
です。
それを「言葉にしなくてもいい」と思った時点で、人は思考停止します。
言葉になっていないことは、考えていないのと同じ。
言葉になっていないことは、人に伝えられないだけでなく、自分の考えとして整理したり推敲したりすることもできません。
考えていない意見は、いわば直感。
どんな組織やチームであれ、これほど危険なことがあるでしょうか。
さらに、
その結果、人は育たず、誤った決断を繰り返し、軌道修正もできなくなり、やがて組織・チームは自滅せざるを得なくなります。

思考を停止させないたった一つの方法
この話は、遠い世界のことではありません。
ご自身の身近な人やシチュエーションに置き換えて考えてみてください。
親として、あるいは年長者として、「説明すること」を省略してしまっていませんか?
人は、説明することを放棄した瞬間に、思考停止します。
ご自身が、年長者である場面が少ない方でも、上司やお客様が雑なコミュニケーション思考停止は、あなたの成長を阻害します。
上司やお客様が、雑なコミュニケーションをすることを、そういうものだと受け入れていませんか?
相手に反発しましょうとは言いません、反面教師として意識し続けることが必要です。
(私も、冒頭の企業の担当者の方には丁寧にご返信しましたし。)
ただ、それを当たり前だと思ってはいけません。
自分がパワーバランスの下の立場であるときは、
自分の考えを丁寧に言葉にし、
相手に見えなかったとしても「考え」の量・質を維持しようと努力する。
パワーバランスの上の立場になったら、
謙虚に、誠実に、考えの量・質をさらに増やす。
これが成長し続けるために、必要な考え方なのです。
ちなみに、相手に怒りをぶつけることで従わせることは、最も簡単な「パワーの行使」の手段です。
感情をぶつけるのは、上司やお客様、親や先生の特権ではありません。
上司やお客様、親や先生が取るべき態度は、相手が陥っている状況や相手の考えを冷静に聞き、自分が怒っている理由を説明できること、適切な行動をとるために必要なアドバイスをすることです。)

しつこいようですが、もう一度。
言葉になっていないことは、考えていないのと同じ。
言葉にすることを諦めた瞬間に、思考停止します。
あなたの成長がとまります。
あなたが成長し続けるために。
苦しくても、面倒くさくても、考えていることを言葉にすることを続けてください。