前回は、思い込みを防ぐには、「相手の立場にたって考える」ことが重要だというテーマでお送りしました。

しかし「相手の立場に立って考える」ことは言うほど簡単なことではありません。
そこで、今回は、ロジカルシンキングを使って、相手の立場に立って考えるためのきっかけを作る方法をご紹介したいと思います。
【事実】と【推測・解釈】と【判断・提案】
これは誰にとっても共有できる客観的な【事実】です。
しかし、その【事実】を、「甘い、責任放棄だ」と考えるか、「そのような方法で退職することもあり得る」と考えるか。
これは、その人の主観による【判断・提案】です。
どんな【判断・提案】になるかは、【事実】をその人がどのように【解釈・推測】するかによります。
ビジネスコミュニケーションではできるだけ主観を排するべきなのか?
時折、「ビジネスコミュニケーションではできるだけ主観を排するべき」と考える方にお会いするのですが、主観がダメなわけではありません。
主観とは、すなわち、自分がどう考え、どうしたいのか。
物事への取り組みや意思表明における主体性そのものなのです。
なので、主観的な【推測・解釈】や【判断・提案】がないことは、傍観者や評論家になってしまいます。
傍観者や評論家が、仕事で評価されないということはわかりますよね。

しかし、主観100%でよいかというと、そうでもありません。
ビジネスコミュニケーションにおいて大事なことは、
その人がした【判断・提案】が、目的に沿っているのかどうか、
相手が判断できるという点。
判断するためには、客観的な【事実】が主観的な【推測・解釈】や【判断・提案】ときちんと切り分けてあることが必要です。
切り分けてあるからこそ、どこに認識の違いがあるのか、建設的な議論ができるからです。
このような形で、事実と意見を分解するフレームワークは、「雲・雨・傘」と言われます。

しかし、普段私たちは、自分が見聞きした【事実】を、どのように【推測・解釈】したか自覚せずに、【判断・提案】を行いがち。
これが、「思い込み」「決めつけ」です。
自分の判断・提案のベースにある、認識した【事実】とその事実に対して加えた【推測・解釈】を明らかにすると、自分の考えを客観視することができ、思い込みに気づくきっかけになります。
【ミニ例題】「新入社員は電話対応をするべきだ」はどう切り分けて考えられるか?
例えば、
という【判断・提案】のベースにある、
【事実】【推測・解釈】を切り分けて考えることはできるでしょうか?
↓
↓
↓
↓
【事実】
→新入社員は、まだ業務経験が乏しく、任せられる仕事が少ない。
【推測・解釈】
→業務経験が乏しい新入社員でも、電話対応ならば対応可能なはずだ。
【判断・提案】
→新入社員は電話対応をするべきだ。
一方、
【事実】
→最近の新卒の新入社員は、10代から携帯電話を習慣的に利用してきた人が多く、電話の取次ぎの経験が少ない。
【推測・解釈】
→誰からかかってくるのかわからない、自分宛てではない電話にでるという経験をしておらず、先輩社員よりも電話対応に対して心理的なハードルを感じているかもしれない
という【事実】【推測・解釈】を明らかにすることができれば、
「新入社員は電話対応するべきなのにしない!」と腹をたてることなく、
「丁寧に指導・サポートしないとだめかもねー」と考えやすいかもしれません。

怒りがわいた時ほど、「思い込み」にとらわれてるもの。
ぜひ、後からの振り返りでかまいません。
自分がどんな【事実】【推測・解釈】【判断・提案】をしているのか、文字にして客観的に確認してみてくださいね。