あなたはどんな場面でロジカルシンキングを活用したいとお考えでしょうか?
ロジカルシンキングは仕事だけではなく、社会課題解決にも使えます。
先日、NPO法人 GEWELさんにお声掛けいただき、
『多様なステークホルダーに伝えるためのロジカルシンキング』
というセミナーを開催しました。
今回のセミナーは普段、NPO法人 GEWELさんのように社会課題に取り組んだおられる方を対象にした
ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)を含む、
「社会課題」の解決に向けて、 ロジカルシンキングをどのように活用し、
どのように伝えたら相手に伝わり、相手を動かすことができるのか?
という切り口でお伝えさせていただきました。
詳しい内容を記事にまとめましたので、ぜひ最後までご覧になってみてください。
目次
ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)とは?
あまり馴染みがない人もいらっしゃると思うので、言葉の意味から解説していきます。
まず、ダイバーシティですが、GEWELさんのホームページから引用させて頂くと
と定義されています。
一般的なダイバーシティのくくり
- 見える違い
外見・性別・人種・国籍・年齢・働き方など - 見えない違い
経験、育った環境・文化・宗教・学歴・地位・所属する組織など - 心理的傾向
価値観・キャリア志向・組織観・職業観・ライフスタイルなど
引用元:NPO法人GEWEL HP「ダイバーシティ&インクルージョンについて」
続いて、インクルージョンです。
インクルージョン(Inclusion)とは
一人ひとり異なる存在として受け入れられ、
全体を構成する大切な一人として、その違いが活かされること
D&Iの考え方が広まっていくことで
一人ひとりのよいところや能力が引き出され、認められ、
自分の居場所があると感じられるようになります。
やりがいと意欲を持って自らの人生を生きる個人が増えることで、
組織や社会全体がいきいきとし持続的な成長へとつながっていくでしょう。
引用元:NPO法人GEWEL HP「ダイバーシティ&インクルージョンについて」
NPO法人 GEWELとは?
NPO法人 GEWELさんは、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の周知と理解のために
- D&I理解促進
- 女性リーダー育成
- 研修管理職の意識啓発
- 推進担当者の育成
などの活動の他、女性の意識調査ダイバーシティの企業の取り組みの調査を行ったり、
また、体験共有として今回の私のように外部講師を招いてのセミナー・イベントを開催したりしています。
また、次のようなミッションを掲げられています。
私たちはダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の意義を広め、
理解を深められる場をつくり、一人ひとりが実践できる社会創造に貢献します。引用元:NPO法人GEWEL HP「ビジョン・ミッション」
なぜ、私がダイバーシティの話をするのか?
このようにGEWELさん自体がダイバーシティを推進している団体です。
その中でロジカルシンキングという少しビジネススキルよりのお話をさせていただきました。
なぜ、ロジカルシンキングの講師の私がダイバーシティを絡めた話をするのか?
疑問を持たれている方もいるかもしれません。
まずこちらがざっくりとした私の人生曲線がこちらになります。
(詳しい自己紹介はこちらをご覧ください)
その中で、自分なりに「自分とダイバーシティはどんな関係あるのか?」を考えた結果、
次の4つの関わりを見出すことができました。
- 多様な企業
- できる人 → 成果が出せない人
- 男性なみの働き方→働き方に制限がある人
- 管理・戦略から人のモチベーション(価値観の転換)
①多様な企業
元々勤めていたコンサルティング会社では、多様な企業をお話させていただくので、いろんな会社さんの事情というのをお伺いします。
自分自身も転職やフリーランスという形で働いていたりして、いろんなお客様・企業というのを見ている、そう言った意味での「多様な企業」がキーワードの1つです。
②できる人→成果が出せない人
そして、コンサルタント時代、途中まではエースとして活躍していたのですが、
病気になって休職して、いわゆる「できない人」になった経験があります。
そんな風に自分が組織の中での見られ方も大きく変わったという経験をしました。
詳しいストーリーについてはこちらをご覧ください↓
③男性なみの働き方→働き方に制限がある人
私が勤めていたコンサル会社はいい意味でも、悪い意味でも、男女関係ない会社でした。
その中で男性なみの働き方をしていて、その結果、病気を引き起こしてしまいました。
そういった働き方から、出産して今は、6歳と2歳の子どもがおり、
子どもを育てながら自分なりに心地いい働き方というも知っています。
④管理・戦略から人のモチベーション(価値観の転換)
経営コンサルタントとして働く中で、人は「リソース」という捉え方でした。
ヒト・モノ・カネみたいな感じで、モノ・カネと同じ系列で話すってことをずっと仕事柄してきました。
でも、その後、病気を患ったり、さまざまな経験や体験を踏まえて、
とすごく実感することができました。
だから、自分自身がロジカルシンキングやダイバーシティをやる中で、
- 「人」のモチベーション
- 「人」がどう成長するか
といったところにものすごく興味が湧くようになりました。
それが私にとってはすごく大きな「価値観の転換」だったのです。
そんな形で自分の中でも実は、モノの考え方・見方・捉え方が大きく変わりました。
それ自身が私にとってダイバーシティじゃないかなと思っています。
ロジカルシンキングとダイバーシティ
今回はロジカルシンキングとダイバーシティを組み合わせた形でお話したいと思います。
一般にロジカルシンキングとそダイバーシティやインクルージョンは、それぞれ独立した離れたものと捉えられがちだと思います。
でも、私自身は、ロジカルシンキングとダイバーシティ&インクルージョンは離れたものではなくて、重なる部分があると考えています。
正しいだけでは人は動かない
ここで皆さんに考えて頂きたいと思います。
世の中には、例えば、「海をきれいに」「STOP!環境破壊」「ダイバーシティ推進」などのように啓発を促すポスターを目にしたり、もしくは、ご自身が学校に通っていた時にそのようなポスターを書かれた経験があるかもしれません。
では、そういったポスターを見て、自分自身の行動を変えることができると思いますか?
自分自身が明日から何が違う行動を取ろうという風にできると思いますか?
- 海をきれいにした方がいい
- 環境破壊STOPしなきゃいけない
- ダイバーシティにも取り組んでいかなきゃいけない
確かにどれも正しいことです。
しかし、おそらくこのポスターを見ただけで、次の日から行動を変えることは難しいと思います。
なぜ、行動が変えられなかったのか?
では、なぜ行動を変えられないのでしょうか?
それは次の4つのポイントが抜けているからだと私は考えます。
1.なぜ、それが必要なのか?
2.それを実行することでどんなメリットがあるのか?
(実行しないことでどんなデメリットがあるのか?)
3.それは「私」とどう関係しているのか?
4.「私」は具体的に何をすればいいのか?
❶なぜ、それが必要なのか?
ポスターという極凝縮された枠の中では詳しく説明することができないのは大前提としてあります。
ただ、ポスターに限らず、ダイバーシティなり、社会課題なり、あるいは、何か誰かに伝えたいと思う時に、
❷それを実行することでどんなメリットがあるのか?
(実行しないことでどんなデメリットがあるのか?)
特に会社組織であればあるほど、いろんな人がいろんな利害を持って動いています。
(もちろんメリットだけで動くわけではないですが)
ただ、営利組織であればあるほど、人々の関心というのは、どうしてもメリット・利益というところにどうしても行きがちです。
その説明がなされていないと、普段の忙しい仕事の中で、プラスαの行動変容を起こすのもまた難しいです。
❸それは「私」とどう関係しているのか?
例えば、環境破壊は「私」とどう関係あるのか?
なんとなく環境は関係する気がする。
でも、子どもや孫の時代だったらすごく困るかもしれないけれど、もしかしたら、
私が生きている間は、環境破壊はそんなに深刻な影響はないかもしれない。
環境破壊だけでなく、同じようにダイバーシティも他の社会課題も含めて、例えば、
- 世界で飢えてる子どもがいる
- 望まない結婚を強制されている子がいる
その社会課題を見た時に「それと私とどう関係あるの?」と思ってしまうかもしれません。
いわゆる自分ごととして考えられていない状態です。
その際に、
という問い掛けがないと、なかなか行動に繋がっていかなかったりします。
❹「私」は具体的に何をすればいいのか?
例えば、環境破壊をSTOPするために、私は明日から何をすればいいのか?
それは自分の頭で考えてくださいってことなのかもしれない。
でも、そればっかりだと、全部見てる人・聞いてる人に
主体性を委ねることになってしまいます。
自分の頭で考えることは、実はものすごいエネルギーのいることです。
そうすると、社会を変えたい、あるいは、組織を変えたい、変革したい、
そういった思いを持っていたとしても、なかなか自分の頭で考えて動いてもらえません。
やはり、
それがあって初めて、相手は動いてくれると思います。
ポスターでも、社会課題を解決でも、それを伝えようとする時に、
この4つの要素が含まれていないと、実は相手は動いてくれないのです。
- なぜ、それが必要なのか?
- それを実行することでどんなメリットがあるのか?
(実行しないことでどんなデメリットがあるのか?) - それは「私」とどう関係しているのか?
- 「私」は具体的に何をすればいいのか?
4つの要素がないと言うことは、つまり、
ということです。
ロジカルに伝えるということ
次の3つの要素が伴った説明を「ロジカルな説明」と定義します。
- わかりやすく、かつ相手の余白を残した主張
- 根拠の具体性
- 飛躍のない丁寧なつながりの説明
ただ、ダイバーシティや社会課題に対するメッセージを伝える時に、こういった要素が欠けたままフワッと説明している印象がすごくあります。
そんな問題意識を私自身は持っています。
ロジカルなだけでも伝わらない
しかし、ロジカルだからといって相手に伝わるわけでもありません。
私自身がある企業さんで、ダイバーシティの研修をさせて頂いた時の話です。
そこは割と昔から続く製造業のある会社でした。
男性の管理職がほとんどで女性の管理職は1%いるかいないかくらいの割合です。
その会社で、男性管理職の特に部長さんを対象にした研修をやりたいというご依頼をいただきました。
意気揚々とその会社向けのプログラムを作って持っていったら、担当者の人が開口一番
とおっしゃいました。
私自身はダイバーシティのようにフワッとしがちなものをロジカルに説明すればわかりやすくなるし、わかりやすく説明したつもりでしたが、厳しいと言われてしまいました。
なぜ、そう言われてしまったのかを考えた時に、
そもそもD&Iを必要だとすら思っていない一般の事業部の男性の部長さんたちに理解してもらう時に、いくらわかりやすく説明したとしても、そもそもニーズも感じておらず、なぜ必要なのかがピンときていませんでした。
そのような状態の方に、D&Iというまだ一般的な概念ではなく、実感を伴わないものなので、自分ごととして入っていかない。
また、その会社はすごく体育会系な雰囲気があり、コミュニケーションが若干荒い雰囲気がありました。
特に今の部長さんの年代は猛烈に働いていて、それが当たり前の中で、ずっと自分たちは耐えてきたのに、突然、ダイバーシティと言われても、これまでの常識や価値観と相容れず、
という風に見えてしまいます。
価値観の押し付けになっていませんか?
何が言いたいか言うと、
正しいことを大きな声で主張しようとすればするほど、
相手は「価値観を押し付けられている」ように感じてしまう
ということです。
私は自分自身の経験からもダイバーシティーはとても大事で、女性にも活躍して欲しいと思っています。
とは言っても、
- まだまだ一般的な概念ではないし、
- 実感も伴っていないし、
- ご自身たちが今まで当たり前だと思っていた価値観を全く違うことを言おうとしている
そんなメッセージを真正面から大きな声で
と言っても、伝わりませんし、価値観の押し付けになってしまいます。
だから、人事の方に「いや渡辺さん、これ厳しいです」と言われてしまったんですね。
こうして私は、
ということを実感しました。
そう考えてみると、例えば、
- 社会課題の解決のために〇〇をするべきだ
- 女性の活躍のために〇〇をするべきだ
そういったメッセージって実は価値観の押し付けなのではないだろうかと思うようになりました。
その会社でずっと頑張ってきた男性の管理職の方に私が大きい声で
「女性を活躍させるべきだ」「ダイバーシティを持ってやるべきだ」と言っても、
その人たちにとっては押し付けに見えてしまいます。
ただ、一方で
- 「多様性を受容しない」という自由も尊重されるべきだ
という意見を受け入れてしまうと、それはそれでD&Iの否定であり、かつ、
やっぱり社会課題の解決が進まないという状況になってしまいます。
では、どうすればいいのでしょうか?
社会課題を解決するために必要なコミュニケーションとは?
D&Iを含む社会課題を解決するために、多様なステークスホルダーの方に理解してもらって、行動に移してもらえるようなコミュニケーションとは、どのようなものなのでしょうか?
それは、
相手の「感情」と「ロジック」のハイブリッドのコミュニケーション
です。そうでないとなかなか人を動かすことはできません。
感情だけで「これが必要だから協力してください」だけではダメで、
きちんと背景・ニーズ・つながりを説明し、どうしたらいいのかという具体的な行動を示す、というロジックも必要です。
一方、ロジックだけ、わかりやすい説明だけできればいいかと言うとそうでわなく、
感情に訴えかける部分も必要です。
- 感情:相手の共感を引き起こし、「なるほど」と思ってもらうもの
- ロジック:理解を促すもの
どちらかだけに偏ってもダメで、感情とロジックの両方を持ち合わせたコミュニケーションがD&Iを含む、社会者課題を解決するために必要なコミュニケーションなのではないかと私は考えています。
「相手の心を動かす伝え方」のフレームワーク
じゃあ、具体的にどういう風にしていくのか?
どんなポスターであれ、どんなパワーポイントの資料であれ、
基本的なメッセージの型はこちらです。
私は△△という理由から、〇〇が必要だと思う。
だから、あなたには、□□という行動をとってほしい。
みなさんのそれぞれ自身の活動に合わせて、具体的な内容は変わってくると思いますけれども、基本的なメッセージの書き方はこちらです。
ポイントとしては3つです。
- 「わかりやすく、かつ相手の余白を残した主張」
- 「根拠の具体性」
- 「飛躍のない丁寧なつながりの説明」
この3つを満たしたものが、D&Iを含む社会課題を解決するコミュニケーションであると考えています。
では、それぞれポイントをみていきたいと思います。
①わかりやすく、かつ相手の余白を残した主張
さらに細かいポイントが3つあります。
- 主語が「私」である
- 「何をしたいか」「どうありたいか」を端的に述べる
- 相手にお願いしたい行動を具体的に示す
では、それぞれ見ていきたいと思います。
D&Iを含む、社会課題などに関して主張するとなると、〇〇はこうするべきだ、という感じで主語が大きくなりがちです。
そうすると、受け手は価値観を押し付けられているように感じてしまいます。
「私はこう思う」「私はこうじゃないかと考えている」と私を主語にすることで、
相手に押し付けるのではなくて、相手と同じ目線で語ることができます。
そうすることで、相手の感情に訴えかけられるメッセージを届けることができます。
単に「〇〇が大切です」と言うのではなくて、例えば、
「D&Iとはこういうもので、そのためにこうありたいんです」あるいは、
「こうしたんです」と具体的に端的に述べる。
「何をしたいか」「どうありたいか」を具体的に端的に述べるのはすごく難しいです。
考え抜かないと、短い言葉で伝わるような表現ができないからです。
私は、いつも講座の中で
と言ってます。
40字以内で言いたいことを伝えようとすると、
- これはいる・いらない
- この言葉じゃなくて、もっとこういった表現にするべきだ
など、ものすごく思考を巡らせることになります。
逆に、40字という制限があるからこそ、深く考え込むことができ、メッセージが磨かれていきます。
そうすることによって相手の感情に共感を呼び、かつ、ロジックを持って具体的に説明することができるようになります。
先ほどのポスターのところで言いましたが、具体的に何をして欲しいのかを示さないと
相手はどうしたらいいのかわかりません。
「相手にとっての次の一歩を具体的に示す」必要があります。
「あなたが考えてくださいね」と相手任せにしないことも1つ大事なことだと思います。
そういうことを伝えていくことによって、価値観の押し付けではなく、相手の共感を呼び、かつ、相手に行動を起こしてもらえる、そういった主張・メッセージの作り方ができていきます。
②根拠の具体性
社会人として働く中で「主張を述べる時には根拠を述べよ」と言うことを、みなさん口を酸っぱく言われてきたのではないかと思います。
けれども、具体的にどういう根拠を述べたらいいのかを意外と言われてなかったりするかもしれません。
根拠には次の4つの具体性の持たせ方があります。
- 定量的なデータ
- 定性的な事実の記述
- 事例
- 私の経験
ビジネスで何か根拠を述べる時には、具体的に定量的に示せという風に言われることが多いかと思います。
定量的
物事の様子または変化などを数字に直して分析するさまを意味する語。
対義語としては「定性的」が挙げられ、物事の数字では表せない性質に着目して分析するさまを意味する。引用元:実用日本語表現辞典
「現場でこんな意見が出てました」「こんなことが起きてます」というような“定性的”な事実の記述も具体的な根拠の1つです。
定性的
物事の様子または変化などを、数字では表せない「性質」の部分に着目して分析するさまを意味する語。
対義語としては「定量的」があり、数字に直して分析するさまを意味する。引用元:実用日本語表現辞典
例えば、「他社事例つけて説明してください」と言われたことがあるかもしれません。
事例は、具体的なイメージを持つのにとても役立ちます。
定量的なデータや、定性的な情報に加えて、事例があると、
- 「私たちはどういう状態を目指さなければならないのか」
- 「どういう行動をとったらよいのか」
が具体的に考えやすくなります。
具体的なイメージを持ってもらう、というのはとても大事なことなのです。
定性的や定量的なもの・事例は、これまでもずっと「根拠が必要です」「根拠を語りなさい」というビジネスコミュニケーションの中で、重要なものとして扱われてきたものだと思います。
いろんな書籍を読んでも、定性的・定量的なデータや事例を根拠として述べなさいとよく言われています。
また、ビジネスだから主観を除いたコミュニケーションをしなきゃいけない、と一般的なロジカルシンキングでは割とそういう風に言われていることが多いです。
しかし、相手を動かすためには実は「私の経験」が大事です。
だからです。
「私の経験」を入れることで、相手に共感が芽生えやすくなり、伝わりやすくなります。
文章の形で表現するかは別として、ぜひ「私の経験」を入れて伝えていただきたいと思います。
③飛躍のない丁寧な繋がりの説明
つながりには次の3つのパターンがあります。
- 根拠と「私は〇〇と思う」(主張)
- 「私は〇〇と思う」(主張)と「あなたに〜をしてほしい」
- 相手の知識や経験と「なぜあなたに〜をしてほしいのか」
「私はこう思う(主張)なぜなら、こうだからだ(根拠)」
根拠と主張がきちんと繋がっていることは、もちろんロジックとして重要です。
主張と「あなたにして欲しい行動」の根拠、その間にきちんとつながりがあるかどうか。
例えば、
「女性に活躍して欲しいと思う、だから、部下に業務を配分する時にこういうポイントで配分してくださいね」
の間のつながりが説明できているか?
このつながりが説明できているかが大切です。
相手もいろんな経験をしてきていて、いろんな知識や意見を持っています。
ただ、それらとこちらが提示する「こうして欲しいという具体的な行動」の間につながりがないとやっぱり理解してもらいにくくなります。
〜をご経験されていますよね?
それは、△△が原因です。
△△に対応するためにはxxという行動が必要なんです。
だから、そんなあなたに私はxxをして欲しいと思っています。
そのつながりと丁寧に説明する。
そうすることによって、「この行動をする」という相手のニーズを掘り起こして、
共感してもらい、行動につなげていくことができるようになります。
つながりを丁寧に説明することによって、
相手の共感を掘り起こし、行動にまでつなげることができる
「つながっている」とは?
「つながっている」とはどういうことなのでしょうか?
私たち普段ものを考えている時に、実は「だいたいつながっている」で済ませていることが多いです。
例えば、「エコバッグを使うと地球温暖化防止に役立つ」という主張に異論がある方はいらっしゃいますか?
多くの方がなんとなくつながっていると感じると思います。
エコバッグを使うと、なぜ地球温暖化防止に役立つのか説明できるかと言われると、ちょっと一瞬言葉に詰まりますよね。
例えば、次の図のような「つながり」を通して説明することができます。
それ以外に、例えば、ゴミが減るから燃やす時に出るCO2が減ります、という説明の仕方もあります。
あるいは、製造時に排出される際の原料の使用量が減りますとか、製造する時に使う電力の量が減ります、なんて言い方もあるかもしれません。
図のようにつながりを説明できて初めて「なるほど」「確かにそうだな」と言ってもらえます。
でも、そのつながりについて考えきれてないことが多く、説明することをできてなかったりします。
普段、私たちは“なんとなくつながっている”で終わらせてしまっていますが、
- 自分が何か伝えたい
- 相手にわかって欲しい
- 相手に実際に行動までつなげて欲しい
このように思う時には、やはりきちんとつなげて説明する必要があるのではと思います。
【参考例】なぜ、企業で「個を活かす」ことが必要なのか?
例えば、私は普段研修の中で「個を活かすダイバーシティ」を企業の中で推進する時に、
と伝えています。
私はその際に次のような「つながり」の説明をしています。
<なぜ、企業で「個を活かす」ことが必要なのか?>
個人が自分自身の個性に気付きを深めると、仕事をするのが楽しくなる
⬇︎
得意なことができて、それが強みになっていく
強みが見えてくると、その会社で自分が成し遂げたいことや
実現していきたいことが見つかりやすくなる
⬇︎
自分の納得のいく意思決定ができ、自信がつくので主体的に動くことができるようになる
⬇︎
成果が上がるので、ますます仕事をするのが楽しくなる
⬇︎
キャリアは思うようにならない時はたくさんあるけれど、そういう時でも主体的に動くことができるようになると腐らずに済むので、自分の本意でない仕事の中でも、得意なことが見つかりやすくなる
⬇︎
つまり、個性に気づくと、個人として働き方・生き方に対する満足度が上がる
⬇︎
さらに、自分自身の個性に気付き、需要できるとようになると、他人を尊重できるようになる
⬇︎
コミュニケーションが上手くなって、周りを巻き込むことができるようになる
⬇︎
停滞した組織の変革・イノベーションが起きて、企業の業績向上する
実際はそれぞれの項目に対して具体的な説明がありますが、
このように「つなげて説明する」ということは意外とされてない、というのが私自身の実感です。
ここまで説明してあげることで、「なるほど」と言ってもらいやすくなります。
個人的な怨念や怒り、羞恥心を取り憑かせてはいけない
ただ、注意しなければいけないのは
ということです。
最初に持っていった私の提案がなぜ人事の人にNG出されたのか。
もう少し理由を深く考えてみると、実はそこに
“私自身の怨念”が入っていたからだと思います。
最初に私が持って行った提案では、
こういう風にやらなきゃいけないです。
と正しいことを大きな声で、ロジックで詰めるような書き方をしていました。
なぜ、そうなってしまったのかを考えると、
- 私だって頑張ったのに認められなかった
- (そこから転じて)既存の男性管理職のせいで女性(=私)は認められない
という根底にあった“自分自身の恨み”を女性全般の意見に投影していたんですね。
なので、全体のトーンとして、
という表現をしてしまっていたのです。
まさに「価値観の押し付け」です。
そういうのを聞かされたらしんどいですよね?腹たちますよね?
なので、ぜひみなさんも感情とロジックのハイブリッドで伝えようとした時に、
と自分自身へ問いかけてから、どういうメッセージで伝えるかを考えていただきたいと思います。
例えば、こんな気持ちが根底にありませんか?
- 〇〇なのに、××で申し訳ない
- 自分たちの方が大変なのに認められてない!
- あなたの世代ほど恵まれてないからね!
- 自分たちの時はこんなに大変だったのに
管理職なのに時短で働いて申し訳ないとか、女性なのに子どもがいなくて申し訳ないとか、
そういった気持ちをきちんと自分で自覚しないままに、
「だからこうするべきなんだ」を語ろうとすると、個人的な怨念や怒りが根底にあるので、人に聞いてもらいにくい話になるんじゃないかと思います。
でも、そういった怒りや羞恥心、悲しみを持つことは、人間なので普通のことです。
ただ、持ってることを自覚しないまま、「こうあるべきだ」「こうしたい」と語ろうとすると、なんとなくそれが伝わってしまいます。
だから、まずは一旦自分の中にないのかを問いかけてみて、その上で、じゃあどう伝えようかと内容を組み立てて伝えていく、そういうことが必要なのかなと思っています。
すぐにできることじゃないかもしれないですし、ご自身で問いかけていただく内容だと思います。
ただ、こういったポイントを踏まえて、ご自身が伝えたいことを構成していただくと相手に伝わりやすく、かつ、共感をもらいやすいような主張ができるんじゃないかと思っています。
- 自分の根底にある、怒り・怨み・羞恥心と向き合う
- 「私」の意見の形で伝える(主語はアイ)
- 相手が考える・主張する余白を残す
まとめ
最後に今回お伝えしました「人を動かすメッセージのフレームワーク」のまとめです。
<メッセージ>
私は△△という理由から、〇〇が必要だと思う。
だから、あなたには、□□という行動をとってほしい。
<ポイント>
◼︎わかりやすく、かつ相手の余白を残した主張
A)「主語が私である」
B)「何をしたいか」「どう在りたいか」を端的に述べる
C)相手にお願いしたい行動を具体的に示す
◼︎根拠の具体性
D)定量的なデータ
E)定性的な事実の記述
F)事例
G)私の経験
◼︎飛躍のない丁寧なつながりの説明
H)根拠と主張
I)「私は〇〇と思う」(主張)と「あなたに〜をしてほしい」
J)相手の知識や経験と「なぜあなたに〜をしてほしいのか」
GEWELさん方でもイベントレポートを書いてくださいましたので最後にご紹介します↓
多様なステークホルダーに伝えるためのロジカルシンキング レポートhttp://www.gewel.org/2019/06/26/report190618/