渡辺まどかです。
「問題解決」に焦点を当てた
長期シリーズをお届けしています。
今回はその16回目です。
1回目:
「問題」とは何か?
3回目:
問題解決のステップ全体像
4回目:
現状を書き出す
5回目:
理想・あるべき姿を定義する
6回目:
問題を定義するときの注意点
7回目:
認知バイアスを回避するために
番外編:
認知バイアスが働いた問題定義の事例
8回目:
問題を細分化する
9回目:
取り組みやすい問題に言い換える
番外編:
因果関係図
10回目:
自分の本音を確認する
11回目:
自分の本当にやりたいことを見つめる
12回目:
ブレーキをはずして次の一歩を踏み出す
13回目:
取り組むべき本当の問題
14回目:
仕事の問題と「私」の問題の切り分け
15回目:
問題ツリーの作成
前回はついに
問題ツリーの作成に入りました。
問題をツリー状に細分化する際には、
What(具体的に何が)
Where(どの場所で、どの組織で
どのプロセス・手順で)
Who(誰の、どの部署の)
の観点で、できるだけ具体的に
詳細に細分化していきます。
ただし、
視野狭窄になってしまわないよう、
「見えている問題の外側を含めた全体像」
を織り込んだツリーにする必要があるのです。
「見えている問題の外側を含めた全体像」
を定義するために、
今回は、MECE
(ミーシー、またはミッシーと読む)
という考え方について触れたいと思います。
MECEとは?
MECEは、
ロジカルシンキングの世界では
大変有名な言葉で、
目にしたことがある方も
いらっしゃるかもしれません。
MECEとは、
Mutually Exclusive and Collectively Exhaustiveの略で、
「漏れなく、ダブりなく」という概念です。
下図でいうと、
一番左側が考えるべきことの全体像について
漏れなくダブりなく分けている
状態と言えます。
MECEを意識せずにものごとを考え出すと、
全体像の中でも特定の部分にしか
焦点があたらず
漏れが出てしまったり、
同じことを別の表現で考えているだけで
ダブりが生じてしまったりします。
もし、皆さまが相手から
「これについては考えていないの?」
「それって同じことじゃない?」と
指摘されてしまうとしたら、
MECEに考える技術を
身に着けていただくと良いでしょう。
MECEに考える方法
MECEに考える方法は、いくつかあります。
■ A or Not Aで考える
■ プロセス(物事の順番)を考える
■ 四則演算で分解する
■ フレームワークを使う
■ 自分で考える
ちなみに、一番確実にMECEになるのは
「A or Not Aで考える」であり、
一番MECEにするのが難しいのは
「自分で考える」です。
ただし、取り組みの難易度としては、
下図の順番ですので、
今回は下図に順番に沿って
ご紹介したいと思います。
①A or Not Aで考える
A(これ)とNot A(これ以外)
で考える方法です。
例えば、
「勉強する」ことについて考えるのであれば、
「勉強しない」についても考えてみるのが、
「A or Not A」という考え方です。
A(これ)について考えるのは
当たり前なので、
みなさん当然深く考えるのですが、
意外とNot A(これ以外)については
盲点になりがちです。
しかし、MECEに考えるのであれば、
Not A(これ以外)の選択肢についても
考えてみると視野狭窄を防げるのです。
ただし、私たちの考えは
いろいろな要素が混在していて複雑です。
自分が考えていることを、
言葉で具体的に補わなければ、
AとNot Aを分けることが
できなかったりします。
例えば、
「3か月後に今住んでいる部屋(賃貸)
の更新期限が来る。どうしよう?」
というテーマで考えるとします。
このシチュエーションで
「引っ越すか…」と考えることを
「A」とします。
すると、ここでの
「Not A」は「引っ越さない」です。
しかし、引っ越すかどうかは、
金銭的にも環境的にも大ごとです。
賃貸契約の更新期限のほかにも
いろいろなことが関わってくるので、
たいていの場合、
もっと考えるべきことが複雑だったりします。
例えば、
「そういえば、そろそろ転職しようとも
考えていたんだよな…」と考え出すと、
ものごとが複雑になりますよね。
「引っ越す」と「転職する」は、
自分の頭の中では関係していることなので
混ぜて考えがちですが、
本来、考えるべき対象としては
別のものごとです。
「引っ越す」と「転職」は、
別のAなので、
分けたうえでそれぞれについて
AとNot Aを考えた方がすっきりとします。
このように、
自分の考えたい対象に関係する
複数のものごとがある場合、
それぞれを分けて考える必要があります。
そのためにも、
考えるべき対象について
キーワードでテーマ出しをして
おしまいにするのではなく、
何について考えているのかを
一旦言語化する必要があります。
上図の例で言うと、
「引っ越しするか…」に関連して出てくる
「転職するなら新しい職場に
近い方がいいよな…」も
言語化しておかないと、考えていることが
ごちゃごちゃしてしまうのです。
MECEという考え方は大変便利ですが、
整理して考える前に、
自分が何を考えているのか、
自分の頭の中の棚卸をしておかないと
整理まで手が回りません。
ぜひ、MECEに考える前に、
自分が考えていることを
一旦言葉にしてみましょう。
白いコピー用紙を準備して、
気の向くままに考えていることを
書き出してみる、でOKです。
このとき、できる限り
文章で書くことをおススメします。
文章で書くのが苦手な方は、
マインドマップやマントラチャートのように、
関連するものごとを
書き出すだけでも違います。
自分が何を考えているのかを、
まずは可視化する。
そのうえで整理するために
MECEを使ってみてください。
ちなみに、
「マインドマップとロジックツリーは
同じものですか」
という質問も受けますが、全く違うものです。
マインドマップやマントラチャートは、
あくまで連想を広げるために
自由に発想するもの
MECEという概念を使いながら作成する
ロジックツリー
(問題ツリーもロジックツリー
に含まれます)は、
考えを整理して具体化・詳細化
するためのものです。
(マインドマップや
マントラチャートについては、
詳細に説明している書籍やサイトが
たくさんありますので、
気になる方は調べてみてくださいね)